ブートローダーがロックされた端末向けのカスタムROMのビルド方法解説

16:55

先日よりコメント欄で、ブートローダーがロックされた端末向けのカスタムROMの作り方についてやり取りをしていたのですが、出来上がったノウハウを共有して広めるのも良いかなと思い、ビルド手順を分かりやすく解説することにしました。


おおまかな流れ

  1. ビルドしたいROMのソースを取得
  2. ビルドしたいROM向けのデバイスツリーを用意
  3. ビルド対象の端末のストックカーネルソースを取得
  4. ビルドしたいROMのソースツリーにストックカーネルソースを適切に配置
  5. デバイスツリーを編集してストックカーネルソースとdefconfigを使うようにする
  6. デバイスツリーを編集してストックカーネルが対応しない機能を削るために、フラグを追加、削除
  7. ストックカーネルを使う際に問題が起こるdisplay HAL、media HALあたりを編集
  8. その他、ストックカーネル向けに変更した方が良い部分を適宜修正(特にSELinuxの動作モードについてはsepolicyなりinitなりを編集してpermissiveかdisabledにする)
  9. ビルドが成功するまで、何度もトライアンドエラーでエラー箇所を修正
  10. ビルドが成功したら、出来上がったROMとramdiskを取り出す
  11. hijack-ramdisk内のシェルスクリプトを対象端末向けに調整して、出来上がったramdiskも中に入れる
  12. 出来上がったROMとhijack-ramdiskを実機に導入して、機能的なバグがあればデバイスツリーを修正して再ビルド

実践

上記の流れに沿って実際にブートローダーがロックされた端末向けに作業してみます。
例としてhayabusa(GX)を使っても良いのですが、せっかく一から書き起こすので新規にhuashan(SP)向けにCM12.1をビルドしてみます。

*ここでは標準的なROMのビルド環境は全て整っている前提で話を進めます

1. CM12.1のソースを用意

repo init -u https://github.com/CyanogenMod/android.git -b cm-12.1

repo sync -j16

2. huashanのデバイスツリーを用意

. build/envsetup.sh

breakfast huashan

huashanのデバイスツリーとCMのカーネルソースがダウンロードされます。

デバイスツリーを用意したら、実機をつないでプロプライエタリなファイルを取り出すのですが、ここでは便宜上、TheMuppetsから拝借します。

svn checkout https://github.com/TheMuppets/proprietary_vendor_sony/trunk/huashan

ワーキングディレクトリにベンダーファイルを含んだ"huashan"というフォルダが作られます。

3. huashanのストックカーネルソースを入手

huashanのストックカーネルソースをSony Developer World の Xperia open source archivesで手に入れます。

huashanの最終ビルドは12.1.A.1.207なので、それ用を使いましょう。

ソースは圧縮されているので適当なアーカイバで解凍して、中のkernelフォルダを取り出します。
"kernel"では分かりにくいので、仮に"viskan"と名前を変更します。
(huashanのプラットフォームはviskanというそうです。blueとGPU以外同じSoCで互換性も高いのにわざわざ分けられているのですね。)

4. デバイスツリー、ベンダーファイル、カーネルソースを配置

ストックカーネルソースとベンダーファイルを用意したら、CMのソースツリーが以下の形になるように配置して下さい。

CM12.1-huashan
├── abi
├── android
├── art
├── bionic
├── bootable
├── build
├── cts
├── dalvik
├── developers
├── development
├── device
├── docs
├── external
├── frameworks
├── hardware
├── libcore
├── libnativehelper
├── ndk
├── packages
├── pdk
├── prebuilts
├── sdk
├── system
├── tools
├── kernel
│   └── sony
│       ├── msm8960t
│       └── viskan
├── vendor
│   ├── cm
│   ├── cmsdk
│   └── sony
│       └── huashan
└── Makefile

5. デバイスツリーをストックカーネル向けに編集

ここからは、huashanのデバイスツリーをストックカーネル向けに編集します。

使用するカーネルソースとdefconfigの場所を変更します。

device/sony/huashan/BoardConfig.mk

# Kernel properties
TARGET_KERNEL_SOURCE := kernel/sony/viskan
TARGET_KERNEL_CONFIG := viskan_huashan_defconfig

メディア、ディスプレイ、オーディオHALはcaf版を使うので、そちらも追記

device/sony/huashan/BoardConfig.mk

# QCOM/CAF hardware
COMMON_GLOBAL_CFLAGS += -DQCOM_HARDWARE
BOARD_USES_QCOM_HARDWARE := true
TARGET_QCOM_AUDIO_VARIANT := caf
TARGET_QCOM_DISPLAY_VARIANT := caf
TARGET_QCOM_MEDIA_VARIANT := caf

# QCOM enhanced A/V
TARGET_ENABLE_QC_AV_ENHANCEMENTS := true

同時にDisplay HALの不要なフラグを削除かコメントアウト

# Display HAL
USE_OPENGL_RENDERER := true
TARGET_USES_ION := true
TARGET_USES_C2D_COMPOSITION := true

#TARGET_DISPLAY_USE_RETIRE_FENCE := true
NUM_FRAMEBUFFER_SURFACE_BUFFERS := 3

6. ストックカーネルに合わせてmedia-cafとdisplay-cafを入れ替える

本来は個別にビルド時のエラー箇所を修正する必要がありますが、今回は関連箇所のコミットをリバート済みのリポジトリを使わせてもらいます。


hardware/qcom/display-caf/msm8960
hardware/qcom/media-caf/msm8960

二箇所のフォルダを入れ替える

7. その他、ストックカーネル向けの変更

huashanのストックカーネルソースはGCC4.7でビルドされていますが、CM12.1はGCC4.9でビルドされるので、それ用の変更をカーネスソースに加えます。

kernel/drivers/usb/gadget/Makefile
kernel/net/bluetooth/Makefile

KBUILD_CFLAGS += -Wno-sizeof-pointer-memaccess

Android 5.1のSELinuxの制限を緩めるために、sepolicyを編集

external/sepolicy/Android.mk

FORCE_PERMISSIVE_TO_UNCONFINED:=false

このままビルドするとzip内のカーネルが自ビルドのものになるので、適宜ストックカーネルと入れ替えるようにする。(詳しくは、そのうち今回のソースを公開するので、そちらを見てください)

8. ビルド開始

さて、これで準備が出来ました。いよいよビルドを始めます。

brunch huashan

全てが適切に編集されていればビルドが通るはずです。

まとめ

今回作成したブートローダーがロックされたXperia SP用のCM12.1のROMとSP向けのhijack-ramdiskを公開します。ただ、実機で動作確認できないので、起動しないかも知れません。

cm-12.1-20151204-UNOFFICIAL-huashan

huashan hijack-ramdisk for CM12.1

Xperia SPを持っていて試される方がいれば、結果を教えてください。

流れとしては以上のようになりますが、見れば分かるとおり、それなりに処理の内容を理解してエラーに対処できる程度の知識がないと難しいです。ただリポジトリを引っ張ってきてビルドするレベルからのステップアップには良いかと思います。

関連する記事

次の記事
« 前の投稿
前の記事
次の投稿 »

5 コメント

Write コメント
匿名
AUTHOR
2015年12月8日 12:47 delete

質問していた者です。
Xperia SP Lockedにて動作を確認しました。SIMの読み出し、バックライトの調光など機能は動作しませんが軽快な動きです。
コメントで聞いていた部分のみの編集でビルドに数回挑んだのですが詳細のないエラーに断念していました‥
デバイスツリーにHALを指定する必要があったのですね
もう一度試してみます。

Reply
avatar
匿名
AUTHOR
2015年12月14日 6:32 delete

BlissPopをビルドし起動させることはできました。上に書いた不具合と同じだけの不具合が存在していますが...
こんどはBagyasz氏のツリーを使ってビルドしてみようと思います。不具合の直し方がいまいちわからないのでぼちぼち探していきます

Reply
avatar
赤星
AUTHOR
2015年12月25日 22:51 delete

画面の輝度調整で問題がある場合は、大抵ライトHAL(lights.msm8960.so等)が正しくないからです。huashuanはオープンソースのライトHALを使っているはずですが、プロプラのHALに差替えてみると良いでしょう。
あるいは、SELinuxの制限かも知れないので、hwconfig.shあたりでPermissiveにして起動してみてください。それでSIMも読み込めるかも知れません。

Reply
avatar
匿名
AUTHOR
2016年1月5日 9:33 delete

SELがデフォルトで無効じゃない可能性を考えてませんでした...カスタムROM脳ですね...ありがとうございます!

Reply
avatar
匿名
AUTHOR
2017年1月3日 13:03 delete

初めまして。GXの頃からお世話になっています。
このたびZ1(SOL23)向けのビルドに挑戦しようと思っているのですが、手始めに
まずはSP向けビルドからお試しをしようとしています。そこでですが、説明中の
-----------------------------------------------------------------------------
7. その他、ストックカーネル向けの変更
「このままビルドするとzip内のカーネルが自ビルドのものになるので、適宜
ストックカーネルと入れ替えるようにする。(詳しくは、そのうち今回のソース
を公開するので、そちらを見てください)」
-----------------------------------------------------------------------------
の部分がよくわからず進められていません。具体的な方法をご教授いただけないでしょうか。

Reply
avatar